「夫婦で歩くスイスアルプス」

ムットゼー小屋往復ハイキング

2012年7月31日。待ち焦がれた快晴の朝がようやくやってきました。滞在しているブラウンヴァルト村から南側に州境方面の山々がスッキリと見えています。写真左がゼルプザンフト(3,029m)とその右奥にビフェルテンシュトック(3,419m)、中央がグラールス州最高峰のテーディ(3,614m)、その右手前にカンメルシュトック(2,124m)を挟んで右端がゲムスファイレンシュトック(2,972m)です。
谷奥のティーアフェートから左の山腹へロープウェイが通じているので、今日はそれを利用して山奥へ分け入ってみようと思います。眼下のリンタール村から奥へは公共交通機関が無く、電話でタクシーを予約します。英語が通じず四苦八苦しましたが、ケーブルカーで山麓駅に下りると、ちゃんと運転手が待っていてくれてホッとしました。

ティーアフェートの山麓駅。大型ロープウェイはダム建設作業員や建設資材を運ぶためのもので、「混雑時は作業員優先です」と表示がありました。料金は1人往復15フラン。

急斜面に設けられたカルクトリットリ駅(山上駅、海抜1,871m)に到着。標高差1,000m余りを一気に引き上げてもらったことになります。谷の向かい側の山腹にはアルテノーレンのアルプが広がっています。写真左上の峰がゲムスファイレンシュトックで、その右はロートシュトック(2,471m)。中央右寄りで頭を覗かせている連山はウルナーボーデン谷の北側に並ぶイェーガーシュテック連峰(2,584m)です。

ロープウェイ駅の上方を越えて南西方向へ続く道に入ります。写真左上の間近に迫る頂フォルダー・ゼルプザンフト(別名ハウザーホルン、2,751m)の右にテーディ、その右肩に見える尖峰クリ・テーディ(別名クラップ・グラルーナ、3,076m)を経て写真中央に遠くピッツ・カザラウルス(左、3,063m)とヒンター・シュピッツアルペリシュトック(右、3,007m)、その右手前は左から順にツュートリビシュトック(2,645m)、ゲムジシュトック(2,430m)、ゲムスファイレンシュトックです。

テーディ山のアップ。残念ながら本日のコースは歩き始めるとすぐテーディがゼルプザンフトの背後に隠れてしまいます。最も美しく全容を眺められるのはロープウェイの中です。

フォルダー・ゼルプザンフトに向かって急斜面をトラバースしていきます。

振り返ると、我が家が滞在中のブラウンヴァルト村の家並みが高台に広がっている様子を一望できます。谷底がリンタール村。中央後方の山はグレールニッシュ連峰で、左端の頂が最高峰のベッヒシュトック(2,914m)、右端のピークがフレーネリスゲルトリ(2,904m)です。写真右端後方はフォルダー・グレールニッシュ(2,327m)、写真左端手前はフォルデラー・エックシュトック(2,449m)です。

ブラウンヴァルト村の左手に聳えるオルトシュトック(2,717m)。その右奥の雲に隠れている山がベース・フーレン(2,802m)で、写真左端手前はカンメルシュトックです。

ゼルプザンフトとの間を隔てるリンメレン谷を見下ろせる場所までトラバースしたら、左手へ登ります。眼前に聳えるフォルダー・ゼルプザンフトの左奥に隠れている平らな頂の方がゼルプザンフトの主峰(ヒンター・ゼルプザンフト)です。

先ず写真左上手前の一段高くなっている高台に登ります。谷に向かって張り出した草地の突端で、地図にはここがカルクトリットリと記されています。そこから写真正面の岩壁の上にあるニュッシェンの草地を経て、更にその上方に見えるムッテンヴェンドリの峰を目指します。

ニュッシェンの突端、ニュッシェンエック(海抜約2,230m)まで登ってきました。テーディ山が殆どゼルプザンフトに隠れて見えなくなりつつありますが、代わってツュートリビシュトックの右にクラリデン(左、3,267m)とボックチンゲル(3,079m)が見えてきています。

ムッテンヴェンドリの峰を右手に眺めつつ、ニュッシェンの斜面を登ります。写真の左手まで登り詰めてから、折り返すように岩壁の上の道を写真右上へ向かいます。

ムッテンヴェンドリに登る手前から、登ってきたニュッシェンの斜面を見下ろして。写真左端がニュッシェンエックです。右上の山はニュッシェンシュトックの前衛峰(2,517m)。

ムッテンヴェンドリを登る道から、振り返ってニュッシェンシュトック(2,893m)を眺めます。褶曲した地層が迫力を感じさせる山です。山頂の左奥の頂はリューヒ(2,850m)。

ゼルプザンフトを右手に眺めつつ、ムッテンヴェンドリの西端を南へ回り込んでいきます。

ムッテンヴェンドリの西端(海抜2,550m)から眺めるクラリデン(写真中央左寄りのピーク)。写真中央がボックチンゲルで、その右に2つの頂を持つテューフェルスシュテック(2,961m)とシュパイヒシュトック(2,967m)を挟んでゲムスファイレンシュトック。クラリデンの左端の支峰クラリデンホルン(3,120m)の左(クラリデン峠またはヒューフィ峠)にシェールホルン(3,295m)が覗いています。

リンメレン谷の奥にリンメレン人造湖が見えてきました。湖の奥でピョコンと出っ張っている山はキステンシュテックリ(ロマンシュ語名ムオット・ダ・ルービ、2,746m)。その向こう側はグラウビュンデン州のスルセルヴァ谷です。

ムッテンヴェンドリの南側へ回り込むと、東にムットゼー小屋が小さく見えました。背後の山は写真左端がルーヒ(3,107m)で、中央右寄りがムッテンシュトック(3,089m)です。ムットゼー小屋へ向かう道は緑の少ない荒地ですが、ところどころに高山植物が群生していて、スイスには珍しく「道を外れるな」との注意書きが設置してありました。

ムットゼー小屋(海抜2,501m)に到着。こじんまりしていますが堅牢そうな建物です。裏手の別棟に清潔なトイレがありました。

ムットゼー小屋の裏手(北側)に出ると、ニュッシェンシュトックの麓に建設作業員用の宿泊施設が並んでいました。多くの作業員が従事している理由は…

恐らく建設作業のために水位が大きく下げられているムット湖。近くに掲示されていた説明板によれば、ムット湖とリンメレン人造湖を地下水路で結ぶ工事が行われているようです。単にムット湖の水を発電に使うだけでなく、リンメレン人造湖の水をムット湖へ汲み上げ、揚水発電所として利用する計画みたいです。ムット湖の一段上に僅かに見えているのがオーバー湖。背後の山は左がシャイトシュテックリ(2,810m)、右がヒンターズルツホルン(2,738m)です。

ムットゼー小屋から少し南へ下ると、リンメレン人造湖が見えます。かつてはこの湖のダムまで下るとトンネルを通ってロープウェイの山上駅へ抜けられたようですが、現在その道は通行止めになっています。我が家が湖を眺めに向かった際も、小屋の人々が大声で「そちらの道は通れないよ!」と注意してくれました。最初はここからムッテンシュトック(写真左上)の山腹を奥へ辿り、グランビュンデン州境のキステン峠(写真右のキステンシュテックリの左側の鞍部)まで歩けないかと考えていましたが、案内標識によれば更に片道1時間半を要するようで、見た目にも簡単ではなさそうなので諦めました。

ムットゼー小屋のテラス席で休憩しました。カミさんはスモモのケーキ(左奥)、私はアンズのケーキ(右手前)を注文。コーヒーも安くて美味しかったです。後方の山はヒンター・ゼルプザンフトと、その左奥にビフェルテンシュトック。

ムットゼー小屋の周囲には可憐な高山植物が咲いていました。写真はラヌンクルス・アルペストリス。

こちらはトラスピ・ロトゥンディフォリウム。

来た道を辿って帰路につきます。写真はカルクトリットリからロープウェイ山上駅へ向かうジグザグの下り道。谷底に見えているのが山麓駅のあるティーアフェートで、その上方の山がカンメルシュトックです。工事現場の職員が長靴を履いた足で飛ぶように我が家を追い抜いていきました。仕事で毎日のように登り下りしているのかも知れませんが、凄いなぁと思いました。

谷の向かい側でゲムジシュトックの右側を流れ下るヴァーレンバッハの急流が印象的。谷底を流れるのはリント川の上流にあたるザントバッハ川です。

ロープウェイの山頂駅が見えてきました。ロープウェイで写真左下に見えているティーアフェートに下ります。谷底の下流に見えているのがリンタール村、その上方の高台が我が家が滞在しているブラウンヴァルト村です。

建設作業現場のような雰囲気のティーアフェート山麓駅。山頂駅から再びタクシー会社に電話し、ドイツ語の単語を並べて出迎えを依頼。タクシーでリンタール村のスーパーマーケット「フォルク」まで送ってもらい、買物してからブラウンヴァルト村へ帰りました。

ブラウンヴァルト村に戻ってティーアフェート方面を遠望すると、今日乗ったロープウェイの山麓駅と山上駅がハッキリ見えました。写真中央後方の山がフォルダー・ゼルプザンフト、その右奥がビフェルテンシュトックです。


トップページへ   前日へ   翌日へ