「夫婦で歩くスイスアルプス」

パイルヨッホ越えハイキング

2015年9月19日。1週間お世話になったフルプメス村のアパートを片付け、荷造りをして8時半頃に玄関へ下りると、ちょうどオーナー氏が店へ出勤してくるところでした。「荷物を午後まで預かって欲しい」と言うと、「今日は友人の結婚式があるので店にいられない。部屋の鍵は午後まで持っていて良いから、戻ったらアパートの中に鍵を置いて出て行ってくれ」とのこと。お蔭で荷物を部屋に残したまま時間を余り気にせずハイキングに出掛けることができました。
路線バスに乗って再び谷奥のムッターベルクアルムへ行き、ゴンドラリフトでアイスグラート(海抜2,880m)まで上ってきました。立派なレストランが建っていますが、周囲は雲の中で殆ど視界がありません。ともかく「シュトゥーバイ・カード」が使える最終日なので、今日から6日振りに運行が再開されたゴンドラリフト「シャウフェルヨッホバーン」に乗り込んで更に上を目指します。

「シャウフェルヨッホバーン」のゴンドラもずっと雲の中で、こりゃ眺望を楽しむのは無理だなと諦めかけた次の瞬間、山上駅に着く寸前でサーッと視界が晴れて雲の上に出ました。写真右上の頂がシャウフェルシュピッツェ(3,332m)で、左の雲の上に浮かんでいる山はルーダーホーフシュピッツェ(3,474m)です。

シャウフェルヨッホ山上駅(海抜3,165m)。ここから氷河の上に付けられた道を暫く歩けばレストラン「ヨッホドーレ」へ行けますが、何はともあれ視界が開けているうちに展望台からの眺望を楽しむことにします。

シャウフェルヨッホ山上駅からシャウフェルシュピッツェを背にして鉄階段を登ります。

すぐに「トップ・オブ・チロル」展望台(3,210m)に到着。看板の左に見える高峰はプファッフェンシュナイデ(3,498m)で、その左奥が山塊最高峰のツッカーヒュットル(3,507m)です。更に左に黒く見えている山がアーペラー・プファッフ(3,353m)で、その背後にヴィルダー・プファッフ(3,458m)の頭が少しだけ覗いています。個人旅行中の日本人のご夫妻がいらっしゃったので暫し歓談し、互いにスナップ写真を撮り合いました。

ツッカーヒュットル、プファッフェンシュナイデの両峰と、右下へ流れ下るプファッフェン氷河のズームアップ。

展望台の南側にべったりと広がるガイスカール氷河。氷河の最も手前がレストラン「ヨッホドーレ」への遊歩道です。ガイスカール氷河の向こう側の山は右がシュスグルーベンコーゲル(3,211m)で、左の円錐形がガイスコーゲル(3,129m)。両者の間に見える雲の溜まった谷がヴィンダッハタール(エッツタールのゼルデン村から東に延びている谷)で、その背後で右山腹にキッツカンプ氷河を纏っているのがイタリア国境に位置するヒンテラー・キッツコーゲル(3,059m)です。その更に右後方はイタリアのコルベンシュピッツェ(伊語名ラ・クラーヴァ、2,868m)、左後方は同じくイタリアのヒルツァー(伊語名プンタ・チェルヴィーナ、2,781m)。

ガイスコーゲルのズームアップ。その右後方はイタリア国境の山シャイブレンコーゲル(3,055m)で、ガイスコーゲル山頂の後方はイタリアのアルプラーシュピッツェ(2,748m)。その更に背後に並んでいるのはドロミーティの山々で、写真左端がローゼンガルテンシュピッツェ(伊語名チーマ・カティナッチョ、2,981m)、写真右がラーテマル連峰(2,842m)です。

シュスグルーベンコーゲルの右にはエッツターラー・アルペンの峰々が並んでいます(写真奥)。写真中央に見える白い峰がシャルフコーゲル(3,540m)で、その右で尖っているのがイタリア国境に位置するヒンテレ・シュヴェルツェ(3,624m)、写真右の高峰がラーモルコーゲル(3,549m)。シャルフコーゲルの左隣はクラインライテンシュピッツェ(3,445m)、更に左へクヴェルコーゲル(3,448m)、イタリア国境のカールレス・シュピッツェ(3,462m)、同じくファルシュンク・シュピッツェ(3,363m)と並び、その左は山腹にハンゲラー氷河を纏ったフォルデラー・ゼーレンコーゲル(3,286m)です。頂に十字架が建っている写真中央手前の山はクライナー・イジドール(3,189m)、その左奥はハーグルカール氷河を纏ったヴァンネンコーゲル(3,088m)。写真下端に見えている丸い建物がレストラン「ヨッホドーレ」です。

南西方向の眺望。視界を遮っているグローサー・イジドールの峰(写真左)の右に、チロル州最高峰のヴィルトシュピッツェ(3,768m)が見えます。右の山はヴァーレンカールザイテンシュピッツェ(3,345m)で、その左にカウナーグラート連峰のゼーコーゲル(3,358m)とロシュティッツコーゲル(3,394m)が見えています。ヴァーレンカールザイテンシュピッツェの手前はヴィンダッハー氷河です。

ヴィルトシュピッツェのズームアップ。ローフェンカール氷河を挟んだ左肩がエッツターラー・ウーアクント(3,556m)、右肩がヒンテラー・ブロックコーゲル(3,628m)で、その右にペーターゼンシュピッツェ(3,472m)を経て写真右端がホッホフェアナークトシュピッツェ(3,535m)です。エッツターラー・ウーアクントの左下がヴァイサー・コーゲル(3,409m)、ヴィルトシュピッツェの手前に広がる広大なミッテルベルク氷河の右端(ペーターゼンシュピッツェの下方)の峰がムートコーゲル(3,309m)、その右にティーフェンバッハ氷河を挟んで、ホッホフェアナークトシュピッツェの手前がティーフェンバッハコーゲル(3,307m)。

西側にはシュトゥーバイアー・ヴィルトシュピッツェ(3,341m)の尖峰が近いです。写真左のヴァーレンカールザイテンシュピッツェとの間に見えている山はヴィンダッハー・ダウンコーゲル(3,348m)。手前の尾根の左側がヴィンダッハー氷河、右側へ下っているのがシャウフェル氷河です。

北側のシャウフェル氷河方面。写真右下に見えるゴンドラリフトが乗ってきた「シャウフェルヨッホバーン」です。雲の上に浮かんでいる峰々は右から順に、ルーダーホーフシュピッツェ、シュヴァルツェンベルクシュピッツェン(3,378m)、シュランデレ(3,393m)、ムッターベルガー・ゼーシュピッツェ(3,302m)、シュランコーゲル(3,497m)、少し間を置いて手前にヒンテラー・ダウンコップフ(3,225m)、その左奥がブライター・グリースコーゲル(3,287m)です。

ゴンドラリフトでフェルナウ中間駅まで下り、既に11時過ぎで出遅れ気味ですが、ここからハイキングに出発します。中間駅の東側では大規模な拡張工事が行われていました。川を渡って湿地帯を東へ進みます。

グローサー・トレーグラー山に向かってガレた斜面を登って行きます。辺りは霧の中で全く視界が利きません。

ようやく少し雲が取れてきました。一旦登り切ったように見えますが、この先に未だワイヤーロープの張られた岩場の急坂がありました。写真左の大きな建物がフェルナウ中間駅で、その奥に建っているのがドレスナー小屋です。背後の山はエックエッセングラート(2,631m)。

本日のハイキングコースの最高地点、パイルヨッホ峠(海抜2,672m)に到着。沢山のケルンが積まれています。写真後方の頂がグローサー・トレーグラー(2,902m)です。

パイルヨッホ峠からは南側にズルツェナウ氷河の末端を見下ろせます。その手前に見えるモレーンの尾根を目指して下ります。

モレーンの手前から下ってきた方向を撮っています。写真右上の鞍部がパイルヨッホで、左の頂はネルトリッヒャー・フェルナウコーゲル(2,920m)です。

モレーンの上から眺めるズルツェナウ氷河の末端。ガイドブック等で見た数年前の写真に比べ、氷河が随分と後退して氷河湖が大きくなっているようです。氷河の上方にツッカーヒュットルの頂が見える筈ですが、残念ながら雲が多くてハッキリしません。

氷河湖の畔まで下ってみます。正面の山はアーペラー・フライガー(3,261m)です。

ズルツェナウ氷河末端の湖。写真右下の湖畔にいる数名の若者達は、果敢にも湖に浮かんでいる氷塊に触ろうと、ズボンを脱いで水の中に入っていきました。冷たいでしょうに…。

氷河湖から滝のように流れ出る川に沿って下流へ下ります。

氷河湖の下方には蛇行して流れる川の周囲に平原が広がっています。その一番奥(下流)に目指すズルツェナウ小屋が建っている筈です。

ズルツェナウ小屋(海抜2,191m)に到着。

ズルツェナウ小屋の内部。ジャガイモスープとアップルパイを頼んで手短に昼食を摂りました。ここでも留学生と思しき日本人の若者グループに遭遇。「これから更にニュルンベルガー小屋まで歩いて今夜はそこに泊まる」と言ってました。若者は元気ですね。

ズルツェナウ小屋の北側は急坂で切れ落ちていて、その下に再び平原が広がっています。ズルツェナウバッハ川の左の山裾に見える建物がズルツェナウアルムのレストランです。

ズルツェナウアルムの平原に下ったところです。背後に見えるズルツェナウ滝の右側の斜面を下ってきました。滝の右上にズルツェナウ小屋が少し見えています。

ズルツェナウアルムのレストラン(海抜1,847m)を通過。沢山の木彫り作品が置かれていました。

ズルツェナウアルムの北端ズルツエックから再び下り道へ。分岐で右手の道を選び、グラーヴァ滝の脇を下りました。途中に観瀑台が2箇所あり、迫力ある滝の流れを間近に眺められましたが、滝の近くの道はぬかるんでいて滑りやすく、カミさんには不評でした(苦笑)。

グラーヴァ滝の真下まで下ると、心地良い傾斜のベンチが並んだ立派な観瀑ステージがありました。

滝の下から緩やかに登り返すと、車道の脇にグラーヴァ・アルムのレストランが建っています。その前の停留所からバスに乗り込み、フルプメス村のアパートに戻って荷物を引き取りました。30分後の次のバスでインスブルック中央駅へ行き、電車に乗り換えて今夜の宿泊地であるゼーフェルト村に向かいました。最終日に「シュトゥーバイ・カード」を駆使して移動でき、ようやく元を取った気分になりました。


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