「夫婦で歩くスイスアルプス」

ラルモン山脈ハイキング

2015年5月6日。今朝のヌシャテルも今にも泣き出しそうな曇り空でしたが、トラヴェール谷方面行きの電車に乗っているうちに青空が広がってきました。終点のひとつ手前のフルリエ駅で下車し、駅前始発のレ・ヴェリエール村行きバスに乗り換えます。写真右後方に見えている白い車両がヌシャテルから乗ってきた電車です。

レ・ヴェリエール駅でバスを降りました。駅とは言っても、ヌシャテルとフランスのフラーヌを結ぶ急行電車が通過するだけで、ここに停車する電車は1本も無く、事実上の廃駅です(駅舎の一部は郵便局として使われているようでした)。数名の作業員が保線工事を行っていました。トイレだけお借りしてハイキングに出発します。線路沿いに写真左奥の方向へ1km余り進むと、もうフランスとの国境です。

レ・ヴェリエール駅の西側で線路を渡り、牧草地の中を北へ進みます。上の写真を撮った場所の少し手前には太陽光発電パネルが並んでいました。

レ・コートの分岐で左折し、「グラン・ボワ・ノワール」という森に向かって西へ緩やかに登ります。「大きな黒い森」という名前に似合わず、新緑の木々が美しい明るい森でした。

森を抜けたところがレ・プチ・セルネの集落。こんな片田舎にレストランが1軒ありました。

更に北上してレ・グラン・セルネの農家群(写真中央奥)から牧草地の斜面を登ります。写真は歩いてきた南の方向を振り返って撮っていて、右奥に遠望できている山はル・シャスロン(1,607m)方面でしょうか。

樹林帯に入ってレ・ディヴォワの尾根上の分岐で左折し、尾根伝いに西へ進みます。フランス国境が近づくと、黄色いスイスの案内標識と白いフランスの案内標識が一緒に立っているところがありました。目指すル・グラン・トロー山頂までは15分、0.9kmとあります(スイスの道標は所要時間で、フランスでは距離で表示されていることが多いです)。

スイス・フランス国境付近で脇道に入り、ラルモン山脈の稜線上に登ってみました。北側が切れ落ちていて、その向こうにフランスのレ・ザイエ村を見下ろせました。遠くに見える家並みはドゥー河畔のモンブノワ村でしょうか。ここで持参したおにぎりを食べました。

脇道に入ったためか、国境が何処か分からないままフランス領に入り、ラルモン山脈の最高地点であるル・グラン・トロー山頂(1,323m)に到着しました。右後方に見えている丸い台には、ここから見える山々が表示されています。モン・ブラン山群やベルナー・アルプスが望めるようですが、今日は残念ながら雲が多くて殆ど確認できませんでした。手前は「ルート・ド・ラプサント(アブサンの道)」の解説板です。トラヴェール谷周辺はアブサン酒(ニガヨモギのリキュール)が生まれた場所なんですね。

ル・グラン・トロー山頂から北西側の眺望。左の家並みはポンタルリエの町の北に位置するヴュイユサン村で(ポンタルリエの町は手前の丘に遮られて見えません)、右の池はドゥー川がル・ドリュジョン川と合流する辺りのようです。

ル・グラン・トロー山頂からラルモン山脈の尾根伝いに西へ緩やかに下ります。稜線の少し南側に舗装道路が付けられていて、快適に歩けました。

南側に草原が広がり、むしろル・グラン・トロー山頂より眺望が良いです。ラヌンクルス(キンポウゲ)やエンツィアン等が花盛りでした。遠くにサン・ポワン湖が見えます。

サン・ポワン湖のズームアップ。その奥の湖はルモレ湖。共にドゥー川の上流にある湖です。左の湖岸にマルビュイソン村の家並みが見えています。

グランジュ・デ・ミロワールの農家を通過(写真は通り過ぎてから振り返って撮っています)。

やがて現れるお洒落なレストラン「ル・グヌフェ」。ここまでは車で常時上って来られます(ここからル・グラン・トロー山頂方面への道は週末・祝日及び7〜8月には車両通行止めになります)。

更に下ると城壁に囲まれたカティナ砦(上ラルモン砦、海抜1,176m)があります。1880〜83年に建造されたフランス軍の要塞の遺構です。内部には入れませんが、下手の城壁外に通信所のような建物があり、そこから南側の眺望を楽しめました。

カティナ砦の前からは西にポンタルリエ市街が一望できました。中央奥の山裾はドンマルタン村で、その左手前がウトー村、写真左奥がシャフォワ村です。

農家が建つレ・ジャンテから樹林帯の遊歩道に入り、マレル砦(下ラルモン砦、海抜1,032m)に到着しました。カティナ砦とほぼ同時期に再建されたものですが、こちらの方がより大きくて堅固な印象で、1940年にはドイツ軍の進撃をここで8日間にわたって阻んだそうです。部分的に崩壊が進んでいて、ここも立入禁止になっていました。

マレル砦からは南西側に小山の頂に建つジュー城を眺められます。ジュー城の背後から写真右手へ流れているのがドゥー川。城の左奥はル・フランブール村の家並みです。

マレル砦から北西方向の眺め。車道と鉄道線路とドゥー川の流れが狭い谷間に向かって延びています。その谷間の向こう側にポンタルリエの町があります。

ジュー城。11世紀の記録が残る古くからの城郭で、18世紀には牢獄となり、ミラボー伯爵やハインリヒ・フォン・クライスト(ドイツの劇作家)が収監されたこともあるそうです。ハイチの独立運動家トゥサン・ルヴェルチュールが収監中に亡くなった場所としても知られています。19世紀後半以降はここもフランス軍の要塞になりました。

マレル砦が建つラルモン山脈(写真右)とジュー城が建つ小山(写真左)の間は、「ラ・クリューズ」と呼ばれる天然の切通しのような狭い谷間になっています。車道と線路が走る「ラ・クリューズ」に向けて急坂を下ります。

「ラ・クリューズ」への下り道は最後に城壁に沿った長い急な階段を辿ります。正面に見えるジュー城は内部の見学もできますが、再び登り返すのが大変そうで行きませんでした。

「ラ・クリューズ」から車道沿いに歩いてポンタルリエの町へ向かいます。途中にジュー城の歴史等を解説したパネルが幾つか設置された広場があり、そこから振り返って「ラ・クリューズ」を撮ったもの。右がジュー城、左上がマレル砦です。

ポンタルリエの中心街へやってきました。街路(ラ・レピュブリック通り)の奥に見えるのがサン・ピエール門で、その右側が市庁舎です。観光案内所で食料品店の場所を訊きましたが、大きなスーパーマーケットは町外れにしかないとのこと。仕方なく中心街にあるコンビニ級の「SPAR」に入りました。残念ながら新鮮な食材は手に入りませんでしたが、ジュラ地方特産の「ヴァン・ジョーヌ(黄ワイン)」にも用いられる葡萄「サヴァニャン種」の白ワインが買えました。翌日の夕食時に味わいましたが、ちょっとシェリー酒に似た独特の風味で美味しかったです。

ポンタルリエの町のランドマーク的存在になっているサン・ピエール門。門の向こう側が中心街です。

中心街の南にあるポンタルリエの国鉄駅。但し、ヌシャテル行きの電車は(15時過ぎの便が出てしまった後なので)21時台までありません。

ポンタルリエ駅前から写真のミニバスに乗り込みます。ミニバスはル・フランブール村と国境のレ・ヴェリエール村を経由してスイスのフルリエ駅前へ戻ってきました。ここで電車に乗り換えてヌシャテル市内へ帰りました。


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