「夫婦で歩くスイスアルプス」

ル・モン・ドール縦走ハイキング

2014年5月8日。やや雲が多いもののまずまずのお天気なので、徒歩で国境を越えてフランス領の山を歩いてみることにしました。高速道路経由の路線バスで3日前と同じヴァロルブ駅へ。駅の西側で線路を潜って北へ向かう登山道に入りましたが、暫く進むと写真のとおり「森林伐採作業のため通行止め」の表示が…。う〜ん、できれば登山道の入口に書いておいて欲しかったですねぇ。迂回路も無いので、仕方なく引き返します。

線路の南側まで戻り、オルブ川が流れる谷底に向かって西へ下ります。オルブ川に沿って走っているのはジュー湖畔方面へ向かう車道。これを渡ってオルブ河畔の遊歩道に入ります。写真正面左の山が3日前に登ったダン・ド・ヴォリオン(1,483m)で、正面右はクレー・デ・ザルエット(1,068m)とその右にロシュ・デ・ザルク(1,219m)。

この辺りのオルブ川は右岸(南側)が「グラン・モルセル」と呼ばれる湿地帯の自然保護区になっていて、池も点在しています。

水力発電所の脇を通り過ぎて森の中へ入ると、オルブ川が急流になっている先(写真正面奥)にオルブ洞窟(ヴァロルブ鍾乳洞)の入口があります(入場有料)。覗いてみたい気もしましたが、通行止めによって遠回りのルートを辿っていることもあり、見送って先を急ぎました。

オルブ洞窟の手前でロルブ川の左岸へ渡り、北側の斜面の道を登ります。新緑が美しい森でした。

車道の直下まで登ると、「フェー(妖精)洞窟」の入口があります。こちらは入れない感じでした。

車道を少し西へ歩いた先から林道に入って更に登って行くと、海抜1,116m地点で国境を越えてフランスに入ります。写真右が国境の管理小屋?ですが無人です。左に見えている柵の向こう側がスイス領で、手前がフランス領。小屋の軒下に両国の国旗が付いています。

国境を越えて間もなく、道の左手にラ・プチット・エシェルの牧畜農家が現れます。

続いてラ・グランド・エシェルの牧畜農家前を通過。

再びスイスとフランスの国境線に出合います(写真の右がスイス領で、左がフランス領)。国境線上には延々と石垣が続いていて、これに沿って登って行きます。

国境線のスイス側に隣接して建っている「ジム(体育)小屋」(海抜1,370m)。閉まっていましたが、小屋の前からは眺望を楽しめました。

もう少し先へ進むと、国境線(写真左)から少しスイス側へ下った場所(こちらも海抜1,370m)にモン・ドール小屋が見えました。自炊宿泊用の山小屋らしかったので近くまで行きませんでしたが、最初に登ろうとした道を辿ればこの小屋の前に出てきた筈です。ようやく本来のルートに戻ることができました。

モン・ドール小屋が見える辺りから国境線を離れてフランス領に入り、広い草原の尾根上を北へ進みます。

草原の尾根の東側は鋭く切れ落ちていて眺望が広がります。写真中央手前に見えている高速道路の終点が前々日に路線バスを待ったル・クルーで、その左側がスイス・フランス国境です。中央奥へ続く高速道路の左側に見えているのがバレーグ村で、その後方にはイヴェルドン・レ・バンの街と、その左にヌシャテル湖が遠望できています。写真左の山裾の村はフランスのレ・ゼシャンペです。

南側の眺望です。写真左端の山がダン・ド・ヴォリオンで、その右奥で残雪を見せているのがモン・タンドル(1,679m)。右に細長く見えている湖がジュー湖です。

ル・モン・ドール山頂(1,463m)。南北に草原の尾根が続いていて、最高地点は余り明確ではありません。

ル・モン・ドール山頂から北西側の眺望。写真中央に見えている湖はルモレ湖のようです。

山頂から北へ少し下り、緩やかに登り返して海抜1,461mの頂から北側を撮ったもの。ル・モン・ドールの東側は垂直の岩壁になっていて、なかなかの迫力です。

海抜1,461mの頂付近から東側に見下ろすラ・ジューニュナ川の谷。写真右端の村がレ・ゼシャンペ、中央がラ・フェリエール村で、その左奥がレ・マイヨとル・ムーランの集落。そこから斜面を左へ上った先がジューニュ村です。ラ・フェリエール村の後方に見える高台の村はアントル・レ・フールで、その背後の山(写真中央)はエギュイーユ・ド・ボルム(1,559m)。その右の頂がル・シュシェ(1,588m)、左奥に見えるのがル・シャスロン(1,607m)です。

草原の尾根上を北へ緩やかに下ります。行く手に見える、電波塔の建つル・モロン(1,419m)の頂を目指します。

途中で風が弱い場所に腰掛け、南東方向に並ぶアルプスの山々を遠望しつつ昼食にしました。写真右端がモン・ブラン山群、中央がヴァリス・アルプス方面、左がベルナー・アルプスです。

上の写真の右端方面のズームアップ。左端がグラン・コンバン(4,314m)の白い峰とその手前にル・グランモン(2,172m)、中央の雲の左下がダン・デュ・ミディ連峰(3,257m)とその手前にコルネット・ド・ビーズ(2,432m)、右下がヴェルト針峰(4,122m)とその右隣にグランド・ジョラス(4,208m)です。

ル・モロン山頂からはチェアリフトが北側のメタビーフ村へ下っています。このチェアリフト、今日が今夏の運行開始初日です。マウンテンバイクと一緒に上ってきてダウンヒルを楽しんでいる人が多かったです。写真右上に見えている家並みはレ・ゾピトー・ヌフ村。

チェアリフトの山麓駅。周囲には休暇用アパートが建ち並んでいますが、スキー客用のリゾートのようで閑散としていました。

坂道を下ってメタビーフ村のバス停前へやってきましたが、スイスのヴァロルブ駅まで行く一日1便しかない路線バスの通過時刻までは未だ2時間以上あります。近くに時間を潰せそうな場所も殆ど見当たらないので(小さなレストランが1軒開いていましたが…)、バスが通る道に沿ってもう少し歩いてみることにしました。

タンポポの花で黄色く染まった草原の中の車道を東へ歩き、レ・ゾピトー・ヌフ村へ。村の西側に1969年に廃線となった鉄道駅の遺構が残されていて、写真の蒸気機関車の他にもノスタルジックな客車や貨車が置かれていました。1915年にモン・ドール・トンネルが開通するまではフランスとスイスを結ぶ鉄道の国境駅として栄えていたらしいです。
後で分かったんですが、この僅かに残された線路を使って観光列車が運行されているらしく、SLや客車はただ置かれているだけではなかったようです。将来的にはヴァロルブ〜ポンタルリエ間の旧路線を全面復活させたいと計画しているようですが…?

レ・ゾピトー・ヌフ村の中心部。オフ・シーズンのためかここも人影はまばらでしたが、雰囲気の良いカフェが開いていたので、テラス席でビールを飲んで休憩しました。

レ・ゾピトー・ヌフ村から更に南へ歩きました。ジューニュ峠付近にあるスーパーマーケットで買物して帰ろうと思ったからですが、残念ながらスーパーは2軒とも閉まっていました。実は後で気付いたんですが、今日はフランスでは祝日(戦勝記念日)だったんですね。仕方なくそのままジューニュ村まで歩き、村の南側にある郵便局前(メリー停留所、上の写真)でバスを待ちました。

一日1便だけのフランス国鉄バスに無事乗車でき、ヴァロルブ駅前へ帰ってきました(乗客は我が家だけ)。このバス、料金は僅か1.20ユーロ。さすがスイスと違って安いですね。ただ、バスが国境を越える際、意外にも税関職員が車内へ乗り込んできてパスポート・チェックがありました。カミさんがパスポートを持参していなかったため焦りましたが、「私の妻です」と説明して何とか許してもらえました。フランス側へ買物に行く住民が多いために税関が厳しくなっているのかも知れません。高速バスに乗り換えてイヴェルドン・レ・バンへ戻りました。


トップページへ   前日へ   翌日へ