「夫婦で歩くスイスアルプス」

シェーヴル峠越えハイキング

2007年9月21日。クラン・モンタナ滞在の最終日ですが、今日も天候が安定していそうなので、ロングコースのハイキングに挑戦することにします。シオン駅前からバスに乗り、エレマンス谷の奥にあるグランド・ディクサンス・ダムの下までやって来ました。写真右が乗って来たテタ社のバス。このバス、シオン駅前のポストバスのターミナルではなくて、駅舎前の停留所が乗り場です。それにシオン中心街が始発なので、駅前が始発だと思い込んでいた我が家はバスを探して右往左往してしまいました。バスの後ろの建物はホテル「ル・リッツ」。立派な建物ですが、ダムの下では眺望も利きませんし、折角ならダムの上に造ってもらいたかったなぁ、と余計なことを考えました。

ホテルの向かいにあるビジター・センターを見学しながら暫く時間を潰し、その脇の乗り場から始発のロープウェイに乗ってダムの上へ(湖面は海抜2,364m)。欧州最高の高さを誇るグランド・ディクサンス・ダムですが、コンクリート重力構造のダムは見た目の美しさと迫力ではモワリー・ダムのようなアーチ式ダムに劣る気がしてしまいます。今日はこの先が長いので、ダムの上の散策はそこそこに切り上げ、ディス湖の西岸に付けられた広い平坦な道を南へ歩き始めます。

長いトンネルを幾つか抜けると、次第に湖畔の眺望が広がってきます。写真右手前の山はロシェ・デュ・ブーク(3,314m)、その左がラ・サール(3,646m)、ラ・リュエット(3,548m)を経て写真左端がモン・ブラン・ド・シェロン(3,870m)です。

ディス湖の南端にモン・ブラン・ド・シェロンと、その左肩を流れ下るシェロン氷河を眺めます。氷河の奥の白い山はラ・セルパンチーヌ(3,789m)。目指すシェーヴル峠は写真の左端、手前の山影の向こう側です。

ディス湖の対岸(東側)には鋭く切り立ったエギュイーユ・ルージュ・ダローラ連峰(3,644m)。写真右の山はラ・カッソルト(3,301m)。

ディス湖西岸の道からグランド・ディクサンス・ダム方面を振り返って。この辺りの湖畔の草原はマーモットの天国。あっちにもこっちにも「うじゃうじゃ」いるという感じで、可愛い姿を楽しませてくれました。

ディス湖の南西端まで来ると、眼前にラン・ダレ氷河が迫ります。左上の山はラ・リュエット。

ディス湖の南端を、ラ・カッソルトを正面に仰ぎながら東へ向かいます。前方を歩くのは途中で出会った山好きの小父さん3人組。互いに写真を撮り合いました。

ディス湖の南東端から登り道に入ります。少し登ったところでディス小屋に向かう道を右に分けます。分岐点に座って湖を見下ろしながら、持参したおにぎりで昼食にしました。

シェロン氷河から流れ下る谷川を鉄製の橋で渡ります。背後の山は左がラ・サール、右がポワント・デュ・ヴァズヴェ(3,356m)です。

シェロン氷河の末端にあたる岩を正面に眺めつつ、谷の東斜面を奥に向かって登っていきます。モン・ブラン・ド・シェロンの右肩にラ・リュイネット(3,875m)の頭が見えてきました。写真左上のポワント・ド・ツナ・レフィアン連峰の手前が目指すシェーヴル峠です。

この草原の斜面は夏なら美しいお花畑になりそうです。9月に咲いている花は少ないですが、リンドウ(ゲンティアナ・カンペストリス)が綺麗でした。

それに何と、未だエーデルワイスの花が幾つも残っていました。

急坂を登り切ると、シェロン氷河がその全貌を現しました。氷河の対岸の岩山テット・ノワール(2,981m)の肩にディス小屋も見えています。

右手にシェロン氷河の流れを見下ろしながらガレた斜面を延々と進み、ようやくシェーヴル峠が近づいてきました。

シェーヴル峠の下に到着しました。最後に登るのはこの長〜い鉄梯子(2連式になっていて、写真の梯子を登り切っても未だ右に別の梯子があります)。高所恐怖症のカミさんは思わず絶句していましたが、励まされて何とか登り切りました。

シェーヴル峠(海抜2,855m)。我が家はこの峠の別名がリードマッテン峠だと誤解していましたが、地図をよく見ると、リードマッテン峠はここより少し北にある海抜2,919mの峠でした。鉄梯子が設置されたお蔭で、リードマッテン峠より低いシェーヴル峠を通れるようになった、という訳なんですね。

シェーヴル峠から見下ろすシェロン氷河と、その向こうにディス小屋(写真左)。小屋の右上がラ・リュエット氷河で、その右上の頂がラ・リュエット。その右にル・プルルール(3,704m)、ラ・サールが並びます。

シェーヴル峠から見下ろすディス湖。左手前はシェロン氷河の末端が湖になっているものです。

シェーヴル峠から東側の眺望。左手前の尖った岩山はプチ・モン・ルージュ(2,928m)で、これからその右麓に見える道を辿って下っていきます。プチ・モン・ルージュの右奥に見える山はダン・ド・ペロック(3,676m)とポワント・デ・ジュヌヴォワ(3,674m)で、その右に覗いているダン・ブランシュ(4,357m)の頭を挟んでエギュイーユ・ド・ラ・ツァ(3,668m)の尖峰。その右はドゥーヴ・ブランシュ連峰(3,664m)、写真右端がダン・ド・ベルトール(3,547m)です。

ダン・ド・ベルトールの右にはイタリアとの国境になるブクタン連峰(3,838m)。更にその右にモン・コロン(3,637m)。

ところで、上の写真左のダン・ド・ベルトールですが、尖った山頂の形が地図で見る印象と違っていて、ずっと気になっていました。2011年7月にここを歩かれたロク69さまから、これがダン・ド・ベルトールの背後にマッターホルン(4,478m)の頭が覗いているものであることを教えていただき、やっと胸のつかえが下りた次第です。ここからマッターホルンが見えるとは全く意外でしたが、確かに2つの山が重なって見えていますね。クライン・マッターホルンからだと左に張り出して見える肩(支峰のピック・ティンダル)が、ここからは逆に右に張り出しているのも分かります。ロク69さま、ありがとうございました。

アローラ村に向けて草原の中の道を東へ下っていくと、シェーヴル峠からは見えにくかったピーニュ・ダローラ(3,790m)が右手にどんどん迫ってきます。流れ下るツィジオール・ヌーヴ氷河が凄い迫力です。

アローラ村が近づくにつれ、右手のアローラ谷の奥にモン・コロンがその全容を現してきます。その右後方の山はレヴェック(3,716m)。手前に下っている氷河は下アローラ氷河です。

アローラ村に到着。帰りのバスを待つ間、懐かしいオテル・デュ・ピーニュ(中央の白い建物)のテラスでビールとファンダン(白ワイン)を頼み、無事の下山を祝いました。手前の土産物店で地元産の蜂蜜を購入。帰国後に楽しみましたが、とても上品な味で、大瓶を買ったのにあっという間に無くなってしまいました。


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