「夫婦で歩くスイスアルプス」

クルー・デュ・ヴァン周遊ハイキング

2015年5月8日。ヌシャテル滞在の最終日です。午後から天気が崩れるとの予報なので、朝7時台のトラヴェール谷方面行き電車で早めに出発し、滞在初日にも来たノワレーグ駅で下車しました。空は快晴です。

ノワレーグ駅から線路とアルーズ川を越えて南東方向へ歩きます。写真は、樹林帯に入る手前にあるヴェール・シェ・ジョリーの農家付近から振り返ってノワレーグ村を撮ったものです。

分岐で東寄り(左手)の道を選んで明るい森の中を登り、「ロベール農場」(海抜972m)に到着。ここまでは車道も通じています。歩き始めたばかりなので立ち寄りませんでしたが、レストランがあって宿泊もできます。

「ロベール農場」はクルー・デュ・ヴァンの入口に位置していますが、早くも行く手には垂直に切り立った岩壁が見えました。クルー・デュ・ヴァンの奥に向かって森の中へ進みます。

広い道が森の中を蛇行しながら緩やかに上って行きます。

クルー・デュ・ヴァンの最奥部、「フォンテーヌ・フロワッド(冷たい泉)」(海抜1,126m)。この少し先の分岐から右手の急坂を登る道に入ります。

登り道「シュマン・デュ・サングル」の中ほどに小さな広場があり、避難小屋?と大きな休憩用ベンチがあって一息入れられます。ここから先は徐々に眺望が開けてきます。

森を抜ける少し手前の斜面で数頭のシュタインボック(ブクタン)の群れと遭遇しました。

そのうちの1頭は3〜4mの至近距離まで近づいても悠然と座ってこちらを見ていました。クルー・デュ・ヴァンは自然保護区になっているので、余り人を怖がらないのかも知れません。

急坂を登り切った先には一面の草原が広がっています。

馬蹄形に落ち込んでいる崖の脇には「石を投げるな、死の危険あり。刑法443条により訴追されるぞ」と書かれた警告板が立っていました。確かに、たった今谷底を歩いてきた身からすれば、上から石を投げられたりしたら堪ったもんじゃないという気がします。

草原の端から恐る恐る覗き込むと、高さ200m以上の垂直の岩壁がクルー・デュ・ヴァンを取り囲むように聳えていて、物凄い迫力です。

断崖上から見下ろすクルー・デュ・ヴァンの窪地(手前の森)。左に見えている岩壁はクルー・デュ・ヴァンの北側を塞いでいる「ド・ダーヌ」(ロバの背)の山脈で、その右端の鞍部が通過してきた「ロベール農場」です。「ロベール農場」の後方に見えるブロ・ドスー村の背後の山がソルモン(1,265m)、その尾根を右へ辿った先の頂がタブレット(1,288m)。ソルモンの後方に昨日登ったモン・ラシーヌ(1,439m)、タブレットの右後方にシャスラル山(1,606m)が見えています。「ド・ダーヌ」の向こう側はラ・サーニュ谷(別名ポン谷)のレ・ポン・ド・マルテル村です。

断崖に沿った道を西へ。写真は歩いてきた方向を撮っていて、断崖の左奥に見える樹林帯の斜面が先程登ってきた登山道「シュマン・デュ・サングル」です。

断崖の南側に広がる広大な草原の先には十字架の立つ丘があり、そこがル・ソリア山の最高地点(1,464m)です。その向こうにはアルプスの峰々がずらーっと並んで見えていました。

ル・ソリア山頂。平原の中にある小高い丘で、断崖の脇と比べても殆ど標高差が無いので、「山頂」という印象ではありませんが…。ここから見えるアルプスの山々を描いた案内板があります。

ル・ソリア山頂から南東側の眺望。写真左が中央スイスの山々、中央がベルナー・アルプス、右がヴィルトホルン方面です。手前の丘はクレ・ト・モワーヌ(1,445m)。

ル・ソリア山頂から南側の眺望。写真左がヴィルトホルン方面、中央がレ・ディアルブレ連峰、右がダン・デュ・ミディ連峰とモン・ブラン方面、右端がフランスのアラヴィ山脈。右端手前の丘はクレ・トニ(1,422m)です。

ベルナー・アルプスのズームアップ。やや霞んでいますが、写真左端から右へ順に、ヴェルホルン(3,192m)、ヴェッターホルン(3,692m)、ベルグリシュトック(3,656m)、シュレックホルン(4,078m)、アイガー(3,970m)、メンヒ(4,107m)、ユングフラウ(4,158m)、グレッチャーホルン(3,983m)、エブネフルー(3,962m)、ミッタークホルン(3,829m)。右手前はシュトックホルン方面の山塊で、グレッチャーホルンの下方がオクセ(2,188m)、そこから左へビュルグレ(2,165m)、ガントリッシュ(2,175m)、ニューネネフルー(2,102m)、クルムファーデフルー連峰(グスティシュピッツ、2,074m)と続き、メンヒの下方がホーマート(2,076m)とその背後にシュトックホルン(2,190m)の頭です。

ブリュムリスアルプ連峰方面。写真左端から右へ順に、ラウターブルンナー・ブライトホルン(3,780m)、チンゲルホルン(3,562m)、モルゲンホルン(3,623m)、ヴィシ・フラウ(3,650m)、ブリュムリスアルプホルン(3,661m)、エッシネンホルン(3,486m)、フリュンデンホルン(3,369m)、ドルデンホルン(写真中央、3,638m)、ビーチホルン(3,934m)、ホッケンホルン(3,293m)、バルムホルン(3,698m)、リンダーホルン(3,453m)、アルブリストホルン(写真右端、2,763m)。手前はフリブール州とベルン州の州境付近の山々で、ホッケンホルンの手前がシャーフベルク(2,239m)、ドルデンホルンとビーチホルンの間がカイゼルエック(2,185m)、ドルデンホルンの左下がヴィッデルクアルム(2,174m)、エッシネンホルンの下方がシャーフアルニッシュ(2,107m)、チンゲルホルンの下方がメーレ(2,087m)とその左にシーベ(2,151m)、写真左端がヴィッデルスグリント(2,104m)です。

ヴァリス・アルプス方面。写真左端がヴィルトシュトルーベル(3,244m)、中央左寄りがミシャベル山群、中央右寄りで尖っているのがヴァイスホルン(4,506m)、その右がヴィルトホルン(3,248m)。手前は写真右端がヴァニル・ノワール(2,389m)、ヴィルトホルンとヴァイスホルンの間の尖峰がダン・ド・フォリエラン(2,340m)、その左隣にダン・ド・ブランレール(2,353m)、写真中央がダン・デュ・サヴィニー(2,252m)、その左で尖っているのがダン・ド・リュート(2,236m)、更にホッホマット(2,152m)とヴァントフルー(2,133m)を経てヴィルトシュトルーベルの手前がサッテルシュピッツェン連峰(リューディゲンシュピッツェ、2,124m)です。

レ・ディアブルレ連峰(写真中央、3,210m)方面。その右隣はテット・ロンド(3,037m)、更に右へキュラン(2,789m)とその右背後にオー・ド・クリー(2,969m)、テット・ア・ピエール・グレ(2,904m)を経てグラン・ミュヴラン(3,051m)、その右隣にプチ・ミュヴラン(2,810m)とポワント・ドファール(写真右端、2,727m)。レ・ディアブルレ連峰の左はやや手前のセ・ルージュ(2,971m)とオルデンホルン(仏語名ベッカ・ドドン、3,123m)を経て左端がサネッチホルン(仏語名モン・ブラン、2,924m)。レ・ディアブルレ連峰の左手前にラ・パール(別名ラ・トルネット、2,540m)、更にその手前の黒い山はル・モレゾン(2,002m)です。テット・ア・ピエール・グレの左手前がダン・ド・リス(2,014m)、グラン・ミュヴランの手前がヴァニル・デ・ザルツ(1,993m)。グラン・ミュヴランの背後にはグラン・コンバン(4,314m)がうっすら霞んで見えています。

ダン・デュ・ミディ連峰(中央左寄りのギザギザの峰、3,257m)方面。その右後方がヴェルト針峰(4,122m)、左後方にアルジャンチエール針峰(3,901m)とその左にトゥール・ノワール(3,836m)。写真右はスイス・フランス国境の山コルネット・ド・ビーズ(2,432m)で、その背後に霞んでいるのがモン・ブラン(4,810m)ですが、頂上付近は雲に隠れてハッキリしません。

フランス方面。中央左寄りの尖峰がアラヴィ山脈のポワント・ペルセ(2,750m)で、その左はロック・ダンフェール(2,244m)、更に左手前にモン・トゥゾン(ウゾン山、1,880m)。中央右寄り手前はモン・ビリア(1,894m)、写真右はバルジ山脈(ポワント・ブランシュ、2,438m)です。

断崖の縁に戻ってきました。ル・ソリア山頂は写真中央奥の方向になります。

断崖の西端から見下ろすクルー・デュ・ヴァン。ド・ダーヌ山脈の右にロベール農場が先程よりハッキリ見えます。その後方は初日に歩いたアルーズ渓谷で、谷の下流の先(写真右上)にはビール湖が霞んでいます。写真左端の断崖「ペルテュイ・ド・ビーズ」の上にも数人の観光客がいるのが分かりますか?

ビール湖方面のズームアップ。ビール湖の中央に延びているのが半島「ザンクト・ペーター(サン・ピエール)島」です。

断崖の西側に農場レストラン「ル・ソリア」があります(宿泊もできるようです)。ここには西側から車道が通じているので、自転車で上ってきた人々で大賑わいでした。幸い木陰のテラスに空席が見つかり、「ジャガイモのグラタンとハムの盛合せ」(サラダ付き、25フラン)1人前と瓶ビール「ボクサー」を頼んで昼食を楽しみました。

断崖「ペルテュイ・ド・ビーズ」から「14曲がりの小道」と呼ばれるジグザグの道を辿ってド・ダーヌ山脈の北斜面を下ります。写真は下山道から見下ろすノワレーグ村で、その背後の急斜面を上った先にラ・サーニュ谷のレ・ポン・ド・マルテル村が見えています。

森の中の農家レストラン「レ・ズイヨン」(海抜1,014m)を通過。様々な動物が飼われていました。
(この農家レストランはその後2016年.2月の強風で深刻な被害を受け、再建に向けて支援を求めています。)

往路で通ったヴェール・シェ・ジョリーの農家前の道へ合流し、アルーズ川を渡ってノワレーグ村へ戻ります。正面の山はノワレーグ村の東側に迫るラ・クリュゼット(1,119m)です。

ノワレーグ村にあるチョコレート工房「ジャコー」に立ち寄りました。人通りも少ない山間の寒村でチョコレート屋が成り立つのか疑問に思いつつお土産を買いましたが、これが何と大正解。特に自宅用に買ったアブサン酒入りのチョコレートはリーズナブルな価格なのにとても上品な味で、もっと沢山買ってくれば良かったと思いました。

駅前のホテル・レストラン「オーベルジュ・ド・ノワレーグ」のテラス席でコーヒーを飲みながら、帰りの電車を待ちました。ここのコーヒーにも「ジャコー」のチョコレートが添えられて出てきて、隣席にいた地元の小父さん達が「このチョコレートはオススメだよ〜」と話し掛けてきました。


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