スイス個人旅行のプランニング

チェーザ・ランドリーナ(シルス)のツインルーム
三つ星クラスで部屋数の少ないホテルがベスト

物価の高いスイスですが、三つ星クラスなら実質的に日本より割安と感じるホテルが多いです。四つ星クラス以上だと、内装が豪華になるだけで機能面では三つ星クラスとそれほど変わらないのに、個人予約では料金がかなり高くなります。それに高級ホテルではロビーやレストランでカジュアルな服装をしていると少し気恥ずかしい感じになるので、着替え用の荷物を余計に持つ羽目になってしまいます。また個人旅行者としてはホテルのレストラン等で賑やかな団体客と一緒になるのは避けたいものですが、最も避けたい日本人の団体ツアーが利用するホテルは四つ星クラスが多いのです。三つ星クラスでも規模の大きなところでは団体客と鉢合わせする確率が高まりますが、部屋数が20〜30程度以下で、できればホテルチェーンに加盟していないところを選べば、多分静かな滞在が楽しめます。小規模なホテルの方が、オーナー家族から温かいもてなしを受けられますし、色々と便宜を図ってもらえます。

クール行きインターシティ
チューリッヒに泊まる必要はない
宿泊料金は一般に大都市ほど高く、とりわけチューリッヒやジュネーヴのホテルは高くて困ります。でもスイスは狭い国でかつ交通網が発達していますから、別にチューリッヒに泊まらなくても効率的な旅程を組むことができます。例えば成田から直行便を利用すればチューリッヒ空港には16時頃に着きますから、17時台の電車に乗って21時までにはカンデルシュテーク、マイリンゲン、ダヴォス辺りまで到着できる(アッペンツェルやアンデルマットならもっと近い)という訳です。夏ならば未だ十分明るい時間帯ですし、当日中に滞在予定のリゾートに入ってしまえば翌日以降の移動がなくて楽です(長いフライトの後で更に移動するのは少々疲れますが、却って時差ボケの修正になる効用もあります)。帰りも夕方発の便を利用すれば、リゾートを当日午前中に出発してもチューリッヒ(またはジュネーヴ)市内で買物をする時間が十分にあります。大都市に泊まらなければ、費用の面では随分と節約になります。

クロスタースのホテル・アルバイナ遠景
できれば3日以上は連泊したい
ハイキングはできればすっきり晴れた日に行いたいものですが、旅行期間中まるまる晴天ということはなかなか望めません。日本人の団体ツアーは1〜2泊毎に次々に移動していくパターンが多いですが、これでは滞在中に目当ての高峰が見られない場所も出てきてしまいます。1週間あたりの滞在地を2箇所くらいに絞り込み、同じ宿に3〜4泊程度は連泊したいところです。スイスでは夏に雨が2日以上降り続くことはまず無いので、まる3日滞在すれば少なくとも1日以上は晴天に巡り会えると期待できます。滞在期間が長いほど、眺めの良い部屋を準備してくれたり、食事の席を落ち着いた場所に指定してくれたり、宿泊料金を少しディスカウントしてくれたりと、ホテル側も色々とサービスしてくれます。「せっかくのスイス旅行だから主要な観光ポイントを全部見て回ろう」と欲張らずに、地域のターゲットを絞り込むことをお勧めしたいと思います。

ホテル・アルバイナでの夕食
ハーフ・ペンション利用が気軽でお得
スイスのレストランは全般にハズレが無く、何処に入ってもまずまず満足できます。山頂レストランや駅舎内のセルフサービスのレストランでも結構美味しい食事を出してくれるのは有り難いです。ただ、大都市を除くとレストランのメニューは大体何処も同じような内容で、店によるバラエティが余りありません。ならば夕食は、わざわざホテルの外へ出るより、ホテル内のレストランで済ませる方が、気分的にもゆったりできて良いと思います。レストランを持つホテルは宿泊者に30〜40フラン程度でフルコース・ディナーを提供してくれますので、コスト面でもハーフ・ペンション(1泊2食付)の利用がお得です。三つ星クラスの小ホテルだとメニューが予め決まっていて料理の選択はできないことが多いですが、飽きないように日替わりで工夫を凝らしてくれますし、逆に外国語メニューの解読に悩む必要が無くて気楽です。中には夕食付でないと宿泊を受け付けないというホテルもあり、このようなところは料理に自信を持っていて大変美味しい料理を出してくれます。

フェクス谷のホテル・フェクス
宿泊地の近くで楽しみたい
いくら交通網が発達しているといっても、片道2時間以上もかかる場所まで出かけていってまた帰ってくるのでは、滞在型旅行の最大のメリットであるゆったりした楽しみ方ができません。滞在期間中は天候に応じて、晴れた日には近くの展望台へ、また曇りの日には谷間や村を散策するというように、滞在地の周辺でハイキングを楽しめるようなプランにしたいものです。スイスではどの村に滞在しても周囲にハイキングコースがありますが、ケーブルカーやロープウェイ等を利用して手軽に山頂や稜線上に立てるのがスイスアルプスの大きな利点のひとつですから、先ずは近くにこれらの移動機関が多いリゾートがお薦めです。但しインターラーケン、サン・モリッツ、ダヴォスあたりになると町が大きすぎて趣に欠けますし全般に料金も高めなので、これらの場合は町外れのホテルか、周辺の小規模な村を選ぶ方が良いと思います。

半額カードとオリジナル周遊切符
スイスパスより「半額カード+往復切符」で
「スイスパス」(2015年より正式名称は「スイス・トラベル・パス」になりました)は切符を買わずに何処へでも乗っていけるので、気侭に放浪旅をしたい向きには大変便利ですが、その分少々高くつきます。滞在型の旅行では大まかな移動予定が前もって決まっている筈ですから、到着空港駅で先ず1ヶ月間有効の「半額カード」(2012年末に再値上げされて現在120フラン)を購入し、併せて滞在予定地を巡る全行程分の切符を購入してしまう方法(正規料金の半額で買える訳ですね)が最もお得で便利です。距離が115km超の切符は往復で買うと10日間有効で(2006年以前は1ヶ月間有効だったんですが…)、往復といっても必ずしも同じ路線を辿って戻ってくる必要は無く、別の地点を経由して出発地に戻っても構いません。主要な経由地を紙に書いて窓口で渡せば、これを入力してオリジナルの周遊切符を作ってくれます。こうすれば旅行の途中で改めて切符を買う必要が無く、便利さの点でもスイスパスと余り変わりません。ケーブルカーやロープウェイ等の大部分はスイスパスを持っていても切符を買う必要がありますし、半額カードの方がスイスパスより割引率が高いこともあります(※1)。なお、スイス国内での移動距離が長い場合には、滞在型の旅行者でも「スイス・トラベル・パス・フレックス」と半額カードを併用する方が安価になります(※2)。また、スイスパスは出発前に旅行代理店等から購入するのが一般的ですが、スイス国内の主要駅でも購入可能です(為替相場の動向によっては、国内の旅行代理店で買うよりお得なこともあり得ます)。
※1【追記】 半額カードでは文字通り半額になるところが多いのに対してスイスパスは原則25%引きだったのですが、2006年からスイスパスでも大半の山岳交通で50%割引が受けられるようになりました。
※2【追記】 スイスを半月間以上旅行する場合、15日間用の「スイス・トラベル・パス」を購入するよりは、1ヶ月用の「GAトラベルカード」の方が割安です。「スイス・トラベル・パス」と違って博物館・美術館等への無料入場特典はありませんが、1ヶ月間連続でスイス全土の電車・バス・遊覧船等や一部の山岳交通が乗り放題になります(対象外のロープウェイ類もその多くが半額になります)。但し、購入時に顔写真を提出する必要があり、外国人はスイス国内の主要駅の窓口でしか購入できません。顔写真付きの「スイスパス」カードが出来上がるまで10日間程度かかりますが、購入時に仮カードが発行されるので購入当日から利用可能です。また一度「スイスパス」カードを入手すれば、以後の「GAトラベルカード」等はウェブサイト上で購入できます。

ライゼゲペックの荷札と登山鉄道切符
ライゼゲペックを活用
有人の鉄道駅(※3)ではライゼゲペック(手荷物の託送サービス)を利用することができます。僅か12フラン(20%値上げされました)の手数料で、大きな荷物を持たずに移動できるのは、スイス旅行の大きな魅力です。駅の窓口へ19時までに荷物を持ち込むと、翌々日の朝9時までに移動先の駅(※4)へ運んでくれます(その駅までの切符かスイスパス等を持っていることが条件です)。これを上手く利用すると移動日にも手荷物を持たずに途中でハイキングや街歩きを楽しむことができ、旅程を効率的に使えます。
なおライゼゲペックを利用すると、駅やバス停から少し離れたホテルに泊まるのも苦でなくなります。チェックインしてからライゼゲペックの半券をホテルの人に渡して荷物の引取り代行を依頼することができるからです。スイスではタクシー料金が非常に高いですし、辺鄙な場所ではまず見つからないので、タクシーには頼りたくありません。ホテルに電話すれば普通は迎えに来てもらえますが、大体夕方頃はホテル側も忙しいので、場合によっては嫌な顔をされることがあります。手ぶらならば少々の距離を歩くのも気になりませんし、村の中心部から少し離れた場所の方が眺めの良い落ち着いたホテルが多いものです。
※3【追記】 2018年6月から約260の主要駅のみの取扱いになりました。また当日中に届く「エクスプレス・ラゲージ」サービスも廃止されました。なお駅以外の指定場所で引渡し・受取りを行う「ドア・ツー・ドア」サービスでは当日配送も可能ですが、1〜2名の利用では料金が高くなるので、数名以上のグループ旅行でないと使いづらいと思います。
※4【追記】 以前は鉄道駅だけでなくスイス全国の郵便局でもライゼゲペックを取り扱っていたので、田舎の小さな村でも手荷物の託送・受取りができました。その後ライゼゲペックの運送システムが変更され、現在では鉄道駅以外ではポストバスのターミナルになっているような主要郵便局でないと受け付けていない可能性があります。詳しくは駅や郵便局の窓口でご確認ください。

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