「夫婦で歩くスイスアルプス」

クールフィルステン南麓 ハイキング

2006年6月23日。ワールドカップの対ブラジル戦の話題でもちきりの日本を前夜に発ち、パリ経由で朝チューリッヒ空港着。空港駅で手荷物をライゼゲペックでアローザへ託送後、身軽な体でクール方面行きの電車に乗り込みヴァーレン湖畔の町ヴァーレンシュタットで途中下車。ポストバスに乗り換えてヴァーレン湖の北側斜面をぐいぐい上り、ヴァーレンシュタットベルクの村を通り過ぎて終点の療養所前で下車。上記写真のこの療養所、とても綺麗で地階にはしっかりしたレストランもあり、とても病院とは思えない雰囲気です。入口の隣には郵便局が併設されていました。ここから森の中の舗装道路を登り始めます。

幸いにお天気も良く、カミさんは旅行前に買った車輪付きのリュックを転がして得意気に歩いています。すぐに森を抜けて草花が咲き乱れる牧草地となり、左手の眼下にはヴァーレン湖の眺めが広がってきます。だんだら上り坂が続きますが、日本より暑いくらいの気温で汗が噴き出します。

舗装道路を40分余り歩いてシュリーナ(ホッホルック)のレストランに到着。ちょうどお昼時で美味しそうな香りが漂っていましたが、コンクリート造りの堅固な建物が少し場違いに思えたのと、我が家はチューリッヒ空港駅でサンドウィッチを買ってきていたので、レストランの裏手から折り返すように砂利道に入り、牧草地の中のベンチでヴァーレン湖や対岸の山々を眺めつつのランチにしました。

そのまま牧草地の中の道を進んでいくと、間もなく忽然と巨大な神殿風の建造物が現れました。「パックスマール(平和祈念碑)」と名付けられたモニュメントで、カール・ビッケルという芸術家が25年も掛けて作ったんだそうです。両脇や正面の壁にはモザイク画が嵌め込まれ、静かな威圧感に溢れています。それにしても、何故にこんな山奥にこのような巨大な代物を作ったのでしょうか…。

当初はシュリーナのアルプを周遊してヴァーレンシュタットベルクに戻るつもりでしたが、クールフィルステン直下のアルプ・チングラ小屋まで1時間との案内標識を見て、行ってみようと思い立ちました。パックスマール近くで休憩していた小父さん達に「そちらは山道だよ〜」と注意された訳が間もなく分かりました。目の前に切り立った岩壁が立ちはだかっていたのです。ワイヤーや手摺りが設置されているので足許さえ気を付ければ登れない道ではありませんでしたが、高所恐怖症のカミさんは足がすくんで立ち往生。何とか励ましつつ登り切りましたが、完全にカミさんの機嫌を損ねてしまいました(苦笑)。

苦労して登った後には絶景のご褒美が待っていました。ヴァーレン湖の左手に広がる町がヴァーレンシュタット、谷の奥はサルガンス方面です。湖の対岸の山が今夜宿泊予定のフルムザーベルク。

遠くにゲムゼ(シャモワ)の群れを眺めながらカール谷をトラバースすると、行く手に目指すアルプ・チングラ小屋が見えてきました。左手にはクールフィルステンの迫力ある岩肌が迫りますが、残念ながら山の上にだけ雲が掛かって頂上付近は見えません。

アルプ・チングラ小屋の手前で道に悠然と寝そべる牛の群れに遭遇。近寄って声を掛けても全く動く気配無し…(汗)。仕方無く下手を大回りに迂回して進みます。

アルプ・チングラ小屋(海抜1,527m)に到着。今夜ここに泊まると思しき家族連れがテラスで寛いでいましたが、我が家は予定のバスに乗り遅れると今夜のホテルに辿り着けないので、そうそうのんびりしている訳にもいきません。リヴェッラで喉を潤して早々に出発します。

小屋の東から下山道に入ります。急斜面の下り道ですが、登りで通ったような岩場は無くてホッとしました。正面にヴァーレン湖やヴァーレンシュタットベルクの村を見下ろしながら下ります。

途中の谷には未だ分厚い雪渓が大量に残っていて、ミニ氷河のような迫力でした。

何とかヴァーレンシュタットベルクの旧郵便局前バス停にポストバス通過予定時刻の10分前に到着。写真右手の建物がかつて郵便局だった建物らしいです。バス・電車・ゴンドラリフトを乗り継いで、無事フルムザーベルクのホテルにチェックインできました。


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